猫の尿道閉塞による会陰尿道瘻造瘻術|手術について獣医師が解説
猫の尿道閉塞による会陰尿道瘻造瘻術|手術について獣医師が解説
「トイレに行っているけどなかなか尿が出ない」
「何度もトイレを行き来している」
「排尿の時痛そうにしている」
おうちの猫にこのようなことはありませんか?
他にも、なんだか元気がない、怒りっぽいなど・・・
このような症状のある猫は尿道閉塞を起こしているかもしれません。
今回は、猫における
尿道閉塞とは
尿道閉塞の症状
尿道閉塞の原因
尿道閉塞の治療
についてお伝えします。
尿道閉塞はできるだけ早く治療が必要な救急疾患であり、時には手術が必要になることもあります。
ぜひ最後までお読みいただき、猫の尿道閉塞の受診すべきタイミング、尿道閉塞と診断された際の治療方法などを知っていただければ幸いです。
尿道閉塞とは
尿道閉塞とは、膀胱から体外への尿が出る通り道である尿道に何かしらが詰まってしまい、尿を出せない状態です。 尿が出せない時間が長くなるほど症状が悪化し、最悪の場合死に至ることもあります。
尿道閉塞の症状
初期には次のような症状が見られます。
トイレに行くけど、尿が出ない
尿が出ないから何度もトイレを行き来する
1回の尿量がいつもより明らかに少ない、ポタポタとしている
排尿時痛そうにしている
症状が進むと、急性腎障害に陥り、次の症状が見られることもあります。
元気がない
食欲がない
吐く
このような症状が見られた場合は、尿道閉塞を起こしている可能性があります。
なるべく早く病院へかかりましょう
尿道閉塞の原因
尿道閉塞を起こす主な原因です。
結石
炎症産物
尿道自体の腫脹
腫瘍
雄猫の尿道はおよそ1〜2mmです。
とても細い尿道なので、上記のものが簡単に詰まってしまいます。尿道そのものが浮腫を起こして尿道を詰まらせてしまうこともあります。
尿道閉塞の治療
治療には内科治療と外科治療があります。
尿道閉塞を確認したらなるべく早く治療に取りかかる必要があります。
内科治療
尿道閉塞の内科治療では、まず閉塞しているものを解除していきます。
動物病院では尿道閉塞を確認したら、尿道にカテーテルを入れて閉塞の解除を試みます。
閉塞のない部分ではカテーテルはスムーズに進みますが閉塞部分では全く進まなくなります。
カテーテルを押し入れても閉塞物が動かない場合は、カテーテルから生理食塩水を入れて、水圧と共に閉塞物を膀胱内に押し戻します。
すぐに閉塞が解除できることもあれば、数十分と時間がかかることもありますね。
尿道閉塞になった場合、まずは内科治療を実施します。
カテーテルで閉塞物を解除できない
閉塞を解除した後も繰り返し尿道閉塞を起こしてしまう
このような時には内科治療の限界と捉え、外科治療を選択していきます。
外科治療
尿道閉塞の外科治療には「会陰尿道瘻造瘻術」と言い、
太くした尿道の出口を、肛門とペニスの間に作る手術があります。
外科治療は、内科治療では治療できない際に選択します。
会陰尿道瘻造瘻術
雄猫の尿道は、途中からとても細くなっており、詰まってしまいやすくなっています。
手術では、細い尿道部分を切り取り、より太くなった尿道を肛門の下に開口させます。
合併症
手術をしたから治療終了とは言い切れません。その後もケアが必要です。
手術の後に起こりうることは以下のとおりです。
感染
再発
一つ目は感染です。
尿道は肛門に近いです。
そのため、手術後は肛門からの腸内細菌が傷口に付着しやすくなります。感染症に注意が必要です。
また、尿道が広がった分、細菌が膀胱まで到達しやすくなり、膀胱炎を起こしやすくなります。
二つ目は再発です。
尿道が広くなった分、尿道閉塞のリスクは軽減しますが、手術をした後も閉塞してしまう可能性があることは知っておかなければなりません。
まとめ
猫の尿道閉塞についてお伝えしました。
尿道閉塞は早めに治療することが大切です。
内科治療で効果がない
再発頻度が高い
このような場合は会陰尿道瘻造瘻術で尿道径を広げる手術が必要となります。
「うまく尿を出せてなさそう」そのようなご心配がありましたら、ぜひお早めに当院へお越しください。
長野県伊那市の動物病院
伊那竜東動物病院