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2024.11.07

会陰ヘルニアで犬の便秘が悪化?|手術による治療法を解説

会陰ヘルニアで犬の便秘が悪化?|手術による治療法を解説



犬の会陰ヘルニアは、肛門周囲の会陰部から腸や膀胱などの臓器が飛び出す状態を指します。特に中高齢のオス犬に多く見られ、お尻周りの筋肉が弱くなることがおもな原因です。便秘や排尿障害などの症状を引き起こし、最悪の場合死に至ることもあります。

この記事では、犬の会陰ヘルニアについて解説していきます。ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の健康を守りましょう。

犬の会陰ヘルニアとは


会陰ヘルニアは、肛門周囲の筋肉が弱くなることで、筋肉の隙間から腸や膀胱などの内臓が飛び出してしまう病気です。通常、筋肉が臓器を適切な位置に保つ役割をしていますが、加齢やホルモンの影響などでこの筋肉が弱まると、臓器を支えきれずに押し出されてしまいます。

「急にお尻の横に柔らかいしこりができた」

と来院される方が多いように、見た目の変化で気がつきやすい病気です。

会陰ヘルニアの原因

会陰ヘルニアの明確な原因はまだ完全には分かっていませんが、いくつかの要因が影響していると考えられています。

加齢

会陰ヘルニアは一般的に中高齢の犬に多く見られ、特に10歳以上の犬が発症しやすいです。加齢に伴い、筋肉が弱くなりやすいことが原因の一つです。

未去勢である

会陰ヘルニアの発生が未去勢のオス犬に多いのは、テストステロンという男性ホルモンの影響とも考えられています。

慢性的な便秘

慢性的な便秘により排便時に力むことが多い犬は、お尻に過度な負担がかかるため、会陰ヘルニアの発症リスクが高くなります。便秘を防ぐためには繊維質を多く含む食事や十分な水分補給が必要です。


会陰ヘルニアの症状

会陰ヘルニアによって起こる症状には以下のものがあります。

肛門周囲の腫れ

会陰ヘルニアで特徴的なのは、肛門周囲にできる目に見える膨らみや腫れです。これは内臓やお腹の中の脂肪などが飛び出しているためで、触ると柔らかいことが多いです。

ただし、脱出した内臓が体内に戻らなくなることを嵌頓(かんとん)といい、この場合には硬い触り心地や紫色の見た目になることがあります。嵌頓状態では、飛び出した臓器に血流が届かなくなり壊死するリスクがあるため、緊急の処置が必要です。

便秘・排便障害

ヘルニア部分に直腸が飛び出していると、腸が圧迫されるため便が通りづらくなり、便秘になります。

  • 排便時に痛みがあり、便をしたがらない

  • 長時間、排便の姿勢をしている

  • 細い便しかでない

といった症状が見られることがあります。

排尿困難

会陰ヘルニアによる危険な症状の一つが排尿障害です。ヘルニア部分に膀胱が入り込むことによって排尿が困難になります。重度の場合、尿路が圧迫されて尿が全くでない状態になり、急性腎障害の併発などにより命を落とすこともあります。

食欲不振

ヘルニアによって腸が圧迫されると、嘔吐や食欲不振が見られることがあります。

会陰ヘルニアの診断

会陰ヘルニアの診断方法は、以下の通りです。

身体検査

肛門周囲の腫れを視診し、ヘルニアを体内に押し戻せるか触診します。

画像診断

レントゲン検査や超音波検査を用いることで、飛び出した臓器の特定ができます。

会陰ヘルニアの治療

会陰ヘルニアの治療には、内科治療と外科治療がありますが、完治のためには外科治療が有効です。

内科治療


便を柔らかくする薬や、食事療法といった内科治療で排便障害を起きづらくします。便がヘルニア部分に詰まって出づらい時には、膨らみを圧迫して便の進みを助けることもあります。

また、便秘を避けるための食事管理も重要です。便が硬い場合には便を柔らかくするための内服薬を使うこともあります。

外科治療


根本的な治療法は手術です。手術では、突出した臓器を元の位置に戻し、弱くなった筋肉を補強することで再発を防ぎます。

会陰ヘルニアを放置すると命に関わる合併症が発生する可能性があるため、早期の手術を推奨しています。手術方法は以下の通りです。

会陰ヘルニアの整復

会陰ヘルニアの手術として一般的な方法は、弱くなった会陰部の強度をあげるため、お尻周りの筋肉を縫い合わせて筋肉の隙間を閉じる方法です。


しかし、筋肉の隙間が大きい場合や、筋肉が薄すぎる場合は、筋肉を縫い合わせることができません。そのため、医療用の人工メッシュ素材などを使って隙間を閉じます。

臓器の固定

腸や膀胱などをお腹の中に糸で縫い合わせ、お尻部分を圧迫しないようにする手術を同時に行うこともあります。

去勢手術の実施

未去勢の犬の場合は、再発防止のために去勢手術を同時に行います。テストステロンの影響を抑え、再発のリスクを減らすためです。


まとめ

犬の会陰ヘルニアは、中高齢のオス犬に多く見られ、特に未去勢の犬では発症リスクが高まります。

便秘や排尿困難といった症状が見られる場合や、お尻に膨らみが見られる場合は、早期の診断と治療が非常に重要です。根本的な治療法は手術であり、筋肉の補強を行うことで再発を防ぐことができます。


当院では、外科治療に力を入れており、会陰ヘルニアの手術も数多く実施しております。気になる症状がある場合は、ぜひ当院までご相談ください。


長野県伊那市の動物病院

伊那竜東動物病院

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