犬の膀胱結石について|血尿や尿道閉塞、悪化すると命に関わることも
犬の膀胱結石について|血尿や尿道閉塞、悪化すると命に関わることも
膀胱結石は犬の泌尿器疾患の中でも多くみられる疾患の1つです。
排尿の回数が増えた
血尿が出ている
排尿の姿勢をとるのに尿が出ていない
などの症状で来院されることが多いです。
愛犬にこのような症状がみられたらとても心配ですよね。
膀胱結石は悪化すると命に関わることもあります。
今回は犬の膀胱結石について解説していきます。
犬の排尿の様子が変だと思った時の対応を知っていただき、愛犬の命を守るためにお役立てください。
膀胱結石の原因
膀胱結石ができる原因には様々なものがあります。
尿中のミネラル分が多い
ご飯のミネラル成分の偏りや飲水不足により尿中のミネラル濃度が濃くなると結石ができやすくなります。膀胱内の尿のpHがミネラル分の結晶化に適している
尿のpHが高くアルカリ性になるとリン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト)結石ができやすいです。
逆に尿のpHが低く酸性になるとシュウ酸カルシウム結石ができやすいです。
尿路感染症を発症している
例えば膀胱炎を発症していると細菌によって尿がアルカリ性に傾き、ストルバイト結石ができやすくなります。
また細菌や脱落した膀胱粘膜が核となり、結石ができやすくなります。
膀胱から尿道にかけての尿の流れが悪い
尿の排泄に問題があると膀胱に尿が溜まっている時間が長くなり、ミネラル分が結晶化しやすくなります。
膀胱炎も発症しやすくなります。
膀胱結石の診断
膀胱結石を診断するには尿検査と画像検査が有用です。
尿検査では
尿の性状
細菌の有無
結晶の種類
などを調べることが可能です。
画像検査にはレントゲン検査や超音波検査があります。
レントゲン検査では結石の有無や位置を確認することができます。
超音波検査では、レントゲンで観察困難な小さな結石も写し出すことができます。
他にも
膀胱粘膜の状態
腎臓の状態
尿路の閉塞状態
尿の動的な流れ
尿管の動き
なども確認することができます。
レントゲンより詳しい情報を得られるのが超音波検査の強みです。
膀胱結石の治療
様々な種類の結石があり、結石の種類によって治療方法は異なります。
実際にはストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石がとても多い結石であるため、今回はこの2つの結石の治療方法について解説します。
ストルバイト結石は食事療法と抗菌薬の投与によって結石を溶解できる可能性があります。
食事療法では
pHのコントロール
ミネラル分(リンやマグネシウム)のコントロール
などの効果が期待できます。
抗菌薬の投与では細菌感染を抑え、細菌によるpH上昇を防ぐことができます。
シュウ酸カルシウム結石は内科療法での溶解は困難です。
多くの場合外科手術を行うことになります。
シュウ酸カルシウム結石ができてしまったら膀胱を切開して摘出することが第一の治療です。
しかしシュウ酸カルシウムは再発率が高く、摘出しても繰り返し形成されてしまうことが多いです。
ストルバイト結石でも、大きくなりすぎて食事療法での溶解が難しそうな場合には手術で摘出することもあります。
いずれの場合も早期に発見して対応することが重要です。
膀胱結石が悪化した場合
膀胱結石を治療せずに放っておくとどうなるのでしょうか。
膀胱結石を放置して状態が悪化した場合に起こりうる病気についてお話します。
尿道閉塞
小さな結石が尿道に詰まったり、大きくなった結石が膀胱の出口を塞いでしまう
ことで排尿困難となります。
最悪の場合膀胱に尿が溜まりすぎて膀胱が破裂し、腹腔に尿が漏れ、腹膜炎を起こします。膀胱粘膜、尿道粘膜の傷害
結石が膀胱や尿道の粘膜を傷つけることで粘膜から出血したり、粘膜が分厚くなったりします。
結石を放置するとこれが繰り返され、自然修復が困難となります。
出血しやすく脆い粘膜になり、血尿が繰り返されることもあります。
膀胱粘膜が分厚くなると尿を溜めたり出したりする機能が弱まり、頻尿などの排尿障害の原因となります。
尿道粘膜が分厚くなると尿道が狭くなり、排尿困難になります。膀胱アトニー
尿道閉塞で膀胱が伸び切った状態が続くと、膀胱がうまく縮むことができなくなります。
ゴムが伸び切った水風船のような状態です。
これを膀胱アトニーといいます。
一度伸び切った膀胱は元の状態に戻すことはできません。
膀胱の収縮を助けるお薬を飲まなくてはいけなくなります。急性腎障害
尿道閉塞によって尿の流れが滞ると腎臓に負担がかかって腎臓がうまく機能しなくなってしまいます。
腎臓が機能しなくなると体の中の老廃物を排出できなくなったり、電解質のバランスが崩れてしまいます。
まとめ
膀胱結石は内科治療で治ることもあれば、外科手術が必要なこともあります。
内科治療で治るはずの結石も放置すると大きくなってしまい、手術が必要になることもあります。
犬の排尿に異常がある場合には「気のせいかな?」と思っても放置せずにお気軽にご相談ください。
長野県伊那市の動物病院
伊那竜東動物病院