猫の乳腺腫瘍は転移する?|乳腺腫瘍の特徴や治療について解説
猫の乳腺腫瘍は転移する?|乳腺腫瘍の特徴や治療について解説
猫の乳腺にも腫瘍ができるのをご存知でしょうか?
実は猫の乳腺腫瘍は悪性であることが多く、全身に転移することもある怖い病気です。
今回の記事では猫の乳腺腫瘍について詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、猫の健康のための参考にしてください。
猫の乳腺腫瘍とは
猫の乳腺は左右4対あり、どの部分にも腫瘍が発生する可能性があります。
腫瘍には良性と悪性があり、猫では9割以上が悪性です。
ほとんどが雌で発生しますが、ごく稀に雄にも発生するため油断禁物です。
特に10歳以上の未避妊の雌で発生が多いため、こまめにチェックしましょう。
猫の乳腺腫瘍は転移する?
腫瘍の転移とは、腫瘍が発生している場所とは違う場所に腫瘍細胞が運ばれ、病巣を形成することです。
悪性の乳腺腫瘍では進行するにつれて転移が起こります。
他の乳腺への転移
猫の乳腺は4対あり、それぞれの乳腺はリンパ管で繋がっています。
そのため1つの乳腺で腫瘍が発生すると他の乳腺に転移しやすく、一度に複数個の乳腺腫瘍が発見される場合も多いです。
リンパ節への転移
猫の乳腺は脇の下にある腋窩リンパ節と鼠径部にある鼠径リンパ節とつながっています。
乳腺腫瘍疑いの猫では場合によってはリンパ節の検査も行い、転移を評価します。
肺への転移
酸素を交換する肺の血管は細く、血液中に流れている腫瘍細胞が引っかかりやすく転移病巣ができやすい場所です。
肺への転移が見つかった場合は全身の血液循環に腫瘍細胞が到達していることを意味するため末期の状態を示します。
肺に複数個の転移病巣を形成することが多いです。
その他の臓器への転移
他の転移場所としては脳、肝臓、骨なども報告されています。
肺転移と同様に末期の状態です。
転移した時の症状
「乳腺腫瘍が転移を起こすとどのような症状が出るの?」
このように疑問に思う方も多いと思います。
病気が進行し乳腺腫瘍が転移すると、元気や食欲の低下に加えて以下のような症状がみられます。
リンパ節への転移
リンパ節に腫瘍が転移すると触診でも触れることが多いです。
リンパ節が腫れていなくても転移していることもあるため注意が必要です。
肺への転移
肺に転移してまもないうちは特異的な症状はありません。
転移病巣が増殖するにつれて呼吸が速くなり、咳が出ることもあります。
さらに進行すると胸に水が溜まり、よりいっそう呼吸が苦しくなるため注意が必要です。
その他の臓器への転移
肝臓に転移した場合は肝障害を示し、
粘膜が黄色っぽく見える黄疸
食欲不振
嘔吐や下痢などの消化器症状
などの症状が現れます。
骨に転移した場合は
歩き方に違和感が生じる
足腰を痛がる
散歩に行きたがらなくなる
などの症状が現れます。
脳に転移した場合は神経症状が生じることが多いです。
猫の乳腺腫瘍のステージ
腫瘍のステージ分類という言葉を聞いたことがありますか?
ステージ分類とは腫瘍の進行度合いを示す指標です。
数字が大きい方が進行していることを指します。
ステージI
最も初期の段階です。
腫瘍の最大径が2cm未満かつリンパ節や他の臓器に転移が無い状態です。
この段階で切除することが望ましく、適切に治療できれば平均の余命は2年以上と言われています。
ステージⅡ
腫瘍の最大径が2〜3cmかつリンパ節や他の臓器に転移がない状態です。
この段階で適切に治療できれば平均の余命は1年以上と言われています。
ステージⅢ
腫瘍の最大径が3cm以上で転移なし
腫瘍の最大径が3cm未満であるがリンパ節転移がある
上記のいずれかの状態です。
この段階の平均の余命は9ヶ月と言われています。
ステージⅣ
最も進行している状態です。
腫瘍の大きさやリンパ節転移に関係なく、他の臓器への遠隔転移があればステージIVに分類されます。
この段階では腫瘍自体が大きくなっていることが多いです。
いわゆる末期のステージであり、平均の余命はわずか1ヶ月と言われています。
猫の乳腺腫瘍の治療
腫瘍ができる限り小さいうちに切除することがもっとも効果的な治療です。
外科手術
乳腺を手術により片側切除もしくは両側切除します。
片側切除は左右どちらかの乳腺を全て切除する方法で、両側切除は乳腺を全て切除する方法です。
かなり大きな術創になるため、侵襲性の高い手術になります。
外科手術で患部を切除することで根治の可能性があります。
抗がん剤
外科手術より治療効果は低いですが、抗がん剤の治療も選択肢の1つです。
麻酔のリスクが高く手術ができない症例や悪性度の高い症例で使用します。
転移した時の治療は?
「腫瘍が転移した時も手術で切除するの?」
このように疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
リンパ節転移の場合は乳腺と一緒にリンパ節を切除する外科手術を行い、さらに抗がん剤も使用することもあります。
肺やその他の臓器に転移が生じている場合は根治目的の外科手術は行いません。
腫瘍が潰瘍になっていたり、出血していたりすることに対する緩和目的での外科手術は行うことはあります。
抗がん剤での治療も1つの選択肢ですが、転移が起きない初期の段階での治療が望ましいです。
乳腺腫瘍の予防
発情が来る前に避妊手術を行うことで乳腺腫瘍の発生率が90%以上低下すると言われているほど避妊手術は乳腺腫瘍の予防に効果的です。
避妊手術によって卵巣や子宮を切除することでホルモン分泌が抑えられ、乳腺腫瘍の発生リスクを抑えます。
繁殖を考えていない場合は若齢のうちに避妊手術を行うことをおすすめします。
まとめ
乳腺腫瘍は小さいうちに、転移が起きないうちに手術で切除することが重要です。
猫の乳腺腫瘍は転移しやすく悪性度の高い疾患です。
乳腺腫瘍で苦しまないためにも早期に避妊手術を行いましょう。
「猫のお腹にしこりがあるけど乳腺腫瘍では?」
このように不安にお思いの方はお早めに当院までご相談ください。
長野県伊那市の動物病院
伊那竜東動物病院