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2025.01.21

犬の乳腺腫瘍は手術で治る?|乳腺腫瘍について獣医師が解説

犬の乳腺腫瘍は手術で治る?|乳腺腫瘍について獣医師が解説



愛犬と過ごしている中でこのようなことはありませんか?


お腹を撫でていると、「あれ、こんなところにしこりがある・・・」と気づく。

トリマーさんに「お腹にできものがあったので、病院に行ってみてくださいね!」と言われる。


その異変、乳腺の病気の可能性があります。


今回は犬の乳腺の病気の中で一番発生頻度の多い乳腺腫瘍について詳しくお伝えします。

ぜひ最後までお読みいただき、愛犬のいざという時に参考にしてください。

犬の乳腺腫瘍とは

乳腺腫瘍とは、乳腺の細胞が増殖(腫瘍化)することでできるしこりのことです。

犬には左右5対、計10個の乳腺があり、それぞれが腫瘍化するリスクを持っています。

しこりの大きさは米粒大のものからテニスボール大のものまでさまざまです。


乳腺腫瘍のうちおよそ半数が良性で、手術をすれば治ることがほとんどです。

一方で半数は悪性で、転移が起こることも珍しくありません。

多くは避妊手術を行ってない女の子や、年齢を重ねて避妊手術を行った女の子に発症します。

乳腺腫瘍とわかるまで

乳腺腫瘍を発見するきっかけとして、多くはご家族様が愛犬を撫でているときにしこりに気づき、病院へ相談に来てくれます。

病院では、そのしこりについて調べるために超音波検査やレントゲン検査、針の検査を行います。

検査結果から乳腺腫瘍を疑うときには治療を進めていきます。

乳腺腫瘍は手術が1番の治療方法

乳腺腫瘍を疑う時は、手術で乳腺を取り除くことが一番いいとされています。

乳腺腫瘍の手術にはさまざまな方法があり、しこりの様子によって手術方法を選択します。


乳腺腫瘍の手術方法

乳腺腫瘍の手術には、しこりだけを取り除く方法や予防的に広い範囲の乳腺を取り除く方法など色々な方法があります。


切除範囲が狭いほど、傷は小さく術後の回復が早くなりますが、再発リスクは高まります。

切除範囲が広いほど、傷は大きく術後の回復に時間を要しますが、再発リスクが減少します。


次にそれぞれの手術方法について解説していきます。

結節切除術

結節切除術は、しこり部分のみを摘出する方法です。

傷が小さいため、術後の回復は早くなります。

しかし、犬の10個ある乳腺のほとんどが残っているので、再発リスクが高くなります。

単一切除術

単一切除術は、しこりとしこりに近い乳腺を切除します。

結節切除術と同様、傷は小さくなりますが再発リスクは高まります。

領域乳腺切除術

領域乳腺切除術は、しこりとその近くの乳腺一帯とリンパ節を切除します。

5対10個の乳腺は、同じ血管やリンパ管を使っている関係で、ある程度グループ分けがされています。

例えば、右側の上から4番目の乳腺にしこりがある場合、右側の上から3番目〜5番目までとその近くにあるリンパ節までを1グループとして切除します。

この手術の方法では、傷の大きさは大きくなります。しかし多くの乳腺を切除することで見えないしこりの取り残しが減るため、再発リスクを減らすことができます。

リンパ節も取ることで、転移をしてるかどうかを確認することができます。

片側乳腺切除術

片側乳腺切除術は、しこりがある側の全ての乳腺を切除します。

例えば、しこりが右側にある場合、右側の1〜5番目の乳腺と近くのリンパ節を切除します。

領域乳腺切除術同様、傷の大きさは大きくなりますが、再発リスクを減らすことができること、転移の確認ができることがメリットです。

両側乳腺切除術

両側乳腺切除術は、5対10個全ての乳腺を切除します。

かなり広範囲な切除になるため、皮膚がくっつかないリスクがあります。

1回で行うにはリスクが高いと判断した場合には、2回に分けて実施することもあります。

避妊手術(子宮卵巣摘出術)

もしもまだ避妊手術をされていない場合は、

乳腺切除と一緒に避妊手術を行うこともあります。

避妊手術を行うことで、再発を完全になくすことはできませんが、女性ホルモンが減ることで、再発リスクは低下すると考えられています。

手術をしてはいけない腫瘍がある?

乳腺腫瘍のうち、手術をしてはいけないタイプのものが1つだけあります。

それは、炎症性乳がんと呼ばれるものです。

炎症性乳がんとは、とても激しい炎症と痛みがある乳腺腫瘍ですが、手術を行うことでさらに痛みが増したり、手術した皮膚がくっつかなくなってしまうこともあります。

炎症性乳がんが疑われる際は、手術ではなく、薬で痛みをできるだけ取り除いてあげる「緩和治療」を行ってあげましょう。

残念ながら、予後はよくありません。


乳腺腫瘍は予防することができるって本当?

乳腺腫瘍は予防することができます。

乳腺腫瘍になってしまう原因に女性ホルモンが影響していると考えられていて、幼いうちに避妊手術(子宮と卵巣を摘出する手術)をすることで、女性ホルモンを抑えることができるため、乳腺腫瘍になりにくい体となります。

避妊手術の一番いいタイミングは、はじめての発情を迎える前です。

犬種によっても異なりますが、生後6〜7ヶ月になります。

発情を迎えてからの避妊手術は早ければ早いほど良いとされていますが、4歳を超えてからの避妊手術では、あまり乳腺腫瘍の予防効果はないと考えられています。

まとめ

乳腺腫瘍の多くは手術で治る病気です。

「しこりがあるかもしれない」そう思った際には早めに当院へご相談ください。

はじめは良性の腫瘍であっても、あっても悪性になってしまうこともあります。

そうなる前に、手術で取り除いてあげましょう。

そして乳腺腫瘍は予防できる病気です。

仔犬をおうちに迎えた際は、ぜひ初めての発情が来る前に避妊手術をしてあげましょう。

大人の保護犬を迎えられた際にも、ぜひ避妊手術を受けさせてあげてください。

避妊手術のご相談もいつでもお待ちしているので、ぜひお気軽にお尋ねください。


長野県伊那市の動物病院

伊那竜東動物病院


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