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2025.01.14

犬の頚部椎間板ヘルニアについて|首の痛みと麻痺症状が出たら要注意

椎間板ヘルニアとは、背骨の椎間板という組織が本来ある部位からはみ出すことで、脊髄神経を圧迫する病気です。

ヘルニアといえば腰が痛くなる病気のイメージがありますよね。

首の骨でもヘルニアが起きることがあり、重症の場合には呼吸ができなくなって命に関わることがあるのです。

今回は頚部椎間板ヘルニアについて解説しますので、ぜひお読みいただき、早めに症状に気付いてあげられるようにしましょう。

椎間板ヘルニアの原因

動物の背骨は、椎骨という小さい骨がいくつも連なってできています。

椎骨と椎骨の間には椎間板という組織があり、クッションのような役割をしています。

椎間板ヘルニアとは、椎間板が変形して本来あるべき部位からはみ出てしまう病態です。

はみ出た椎間板物質が、背骨の中を通る脊髄神経を圧迫することで、痛みや麻痺などの神経症状が出ます。


椎間板ヘルニアの原因は次のものがあります。

  • 犬種:次のような軟骨異栄養性犬種とよばれる犬種は、元々椎間板ヘルニアを起こしやすいです。

    • ミニチュアダックスフンド

    • コーギー

    • ビーグル

    • フレンチブルドッグ

    • パグ など

  • 加齢による椎間板の変性

  • 事故などでの強い衝撃による外傷

加齢や外傷による椎間板ヘルニアは、どの犬種でも発症する可能性があります。


頚部椎間板ヘルニアの症状

頚部椎間板ヘルニアの主な症状は、首の痛みと麻痺症状です。

次のような様子があると頚部椎間板ヘルニアの疑いがあります。

  • 頭が上がらず上目遣い

  • 首を触ると怒る

  • どこか痛がってキャンと鳴く

  • 体がこわばっている

  • 動きたがらない

  • 足をひきずっている

  • 足に力が入らず立てない


頚部椎間板ヘルニアの症状は、程度によって次の3段階で評価をします。

  • グレード1:痛みの症状のみ

  • グレード2:四肢の麻痺症状があるが立ち上がれる

  • グレード3:重度の麻痺症状で立てない


症状が軽度だと様子をみてしまいがちですよね。

頚部椎間板ヘルニアの場合は、様子をみているうちに急に症状が進行してしまうことがあります。

最も重症の場合には、呼吸困難になって命に関わります。

呼吸をするための筋肉は脊髄神経からの指令を受けて動いているため、脊髄の障害によって呼吸をするための筋肉が動かせなくなってしまうのです。

頚部椎間板ヘルニアの検査

椎間板ヘルニアをはじめとする脳神経系の病気では、診断にCT検査やMRI検査が必要となることが多いです。

MRI検査では、何番目の頸椎に病変があるのか、脊髄神経の圧迫や損傷の程度などを調べることができます。


診察では、まずは触診で痛みや麻痺の状況を確認します。

脳神経系以外の病気でも痛みや神経症状が出ることもあるため、血液検査やX線検査などの全身検査を行い、他の病気がないかもみていきます。

これらの検査から、椎間板ヘルニアなどの脳神経系の病気が疑われる場合には、麻酔をかけてCT検査やMRI検査を行う流れになります。

頚部椎間板ヘルニアの治療

頚部椎間板ヘルニアの治療は、経過や重症度により変わります。

根本的な治療は手術になり、特に麻痺症状が出ている場合には手術が必要となることが多いです。

手術の術式はいくつかありますが、頚部椎間板ヘルニアでは主に「ベントラルスロット術」とよばれる手術を行います。

首の前側から切開して、気管や食道をよけて椎骨にアプローチし、飛び出ている椎間板物質を取り除いて脊髄の圧迫を解除する手術です。


グレード1で痛みの症状のみであれば、内科治療も選択肢のひとつです。

なるべく安静にしながら、炎症を抑える薬を投与して回復を待ちます。

ただし、内科治療を行っても改善しない場合もあります。

グレード2〜3に進行してしまうこともありますし、椎間板ヘルニアを一度起こした犬では再発したり他の部位にも病変ができたりすることが多いです。

そのような場合はやはり手術が必要になります。


頚部椎間板ヘルニアは、重症化する前に手術が実施できれば、術後は比較的早く痛みや麻痺の改善がみられます。

手術が必要と判断されたら早めに行ってあげることが大切です。

まとめ

頚部椎間板ヘルニアは、急性に進行すると呼吸困難になるなど命に関わることもある病態です。

重症化する前に治療をしてあげましょう。

早めに症状に気付くことが理想ですが、痛みや麻痺の症状はわかりづらいこともあります。

愛犬の動きや様子が何となく普段と違うなど、些細なことでもお気軽にご相談ください。


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伊那竜東動物病院

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