犬の脂肪腫は良性?悪性?|良性に見えても治療した方がいい脂肪腫とは
犬の脂肪腫は良性?悪性?|良性に見えても治療した方がいい脂肪腫とは
犬の脂肪腫は高齢の犬に一般的に見られる腫瘍です。
高齢の愛犬の体に柔らかいしこりがあることを発見し、動物病院に連れて行ったところ、
「これは脂肪腫といって悪性じゃないから手術をしなくてもいいよ。」
と言われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
もちろん脂肪腫は良性で手術をする対象にならないことが一般的には多いのですが、実は手術をした方が良いパターンがいくつか存在します。
今回は
「うちの子の脂肪腫どんどん大きくなってきているけど大丈夫かな…」
「悪性じゃないと言われたけど心配だな…」
という疑問を解消できるように脂肪腫について解説していきます。
犬の脂肪腫とは
脂肪腫は脂肪組織からできる腫瘍のことです。
脂肪組織からできているのでとても柔らかいのが特徴ですね。
脂肪腫そのものは無害なことが多く良性腫瘍と言われています。
多くの場合は麻酔事故のリスクや、手術で痛い思いをさせてしまうリスクを懸念して手術による摘出を行わないでことが多いです。
ただし、それはあくまで一般論で、実は手術を検討した方が良い例も存在します。
良性腫瘍と悪性腫瘍の違い
そもそも良性腫瘍と悪性腫瘍の違いとはなんでしょうか?
最も大きな違いは
「良性腫瘍は浸潤、転移しない」
「悪性腫瘍は浸潤、転移する」
という点です。
浸潤というのは周りの組織や臓器に広がっていくという意味で、転移とは腫瘍細胞が本来の腫瘍とは別の場所で腫瘍細胞が増殖することです。
例えば、悪性の乳腺腫瘍(乳がん)を持っている犬で、肺で腫瘍細胞が増殖し、正常な肺の働きができなく呼吸困難になる、というのが転移の典型的な例ですね。
悪性腫瘍の場合は浸潤や転移をする前に全ての腫瘍を切除する手術を行うのが一般的な方法ですね。
脂肪腫は良性腫瘍なので、以上の点から考えると、手術をしなくても良いということになります。
悪性の脂肪腫?浸潤性脂肪腫、脂肪肉腫とは
ここまでお話ししたように脂肪腫は良性腫瘍なのですが、中には同じ脂肪組織からなる腫瘍でも悪性、または悪性と似たような動きをする腫瘍が存在します。
それが、浸潤性脂肪腫と脂肪肉腫ですね。
浸潤性脂肪腫は良性ですが、周囲の組織や内臓に浸潤し、浸潤した場所に応じた症状が出ます。
例えば、脊髄で浸潤したら体は麻痺していくし、気管にできれば呼吸困難になることがあります。
脂肪肉腫は脂肪組織からなる悪性腫瘍で浸潤だけでなく転移をすることがあります。
脾臓にできた脂肪肉腫が肝臓に転移した例などがあるようです。
それぞれ脂肪腫と浸潤性脂肪腫と脂肪肉腫を診断するためには、触診、注射の針を刺して腫瘍の細胞を一部採取する細胞診、超音波検査、CT検査が必要になります。
こういった悪性、または悪性と似たような動きをする浸潤性脂肪腫や脂肪肉腫はなるべく早く治療をして浸潤や転移を抑えていく必要がありますね。
治療方法
これらの腫瘍の治療は、手術による切除が最も有効ですね。
特に脂肪腫は切除して全て取りきれてしまえば、同じ場所で再発する例は極めて少ないです。
しかし、手術をした後に別の場所で発生することもあり、注意が必要です。
浸潤性脂肪腫や脂肪肉腫はそもそもの腫瘍のサイズが大きく周囲の組織に浸潤することがあるの
で、完全切除ができないこともあります。
そのため、取りきれなかったときに術後の放射線療法や抗がん剤の投与を行うこともあります。
中には、
「脾臓に脂肪肉腫ができたので脾臓ごと切除する」
「脚に脂肪肉腫ができたので脚ごと切除する」
といったこともあり、慎重な判断が要求されます。
良性に見えても治療を検討した方がいい脂肪腫
ここまでお話ししてきたように悪性腫瘍であれば手術など治療を行い、良性腫瘍であれば基本的には無治療で経過観察をしても良いとされています。
ただし、脂肪腫の中には治療を検討した方がいい例もあります。
それが、
審美的に気になる場合
機能的障害がある場合
周囲組織を圧迫する場合
大きくなるスピードが速い場合
です。
順番に見ていきましょう。
一つ目の審美的に気になる場合は、言い換えると見かけが気になる場合ですね。言葉を話せないので正確には分かりませんが、犬は自分の見かけを気にしていないと思われるため、多くの場合は飼い主側の気持ちの問題となります。
これを理由として手術をされる方は少ないです。
二つ目の機能的に障害がある場合は、例えば脇の下や膝に腫瘍が発生した場合など、明らかに腫瘍があることで動きづらくなってしまっている場合ですね。
発生場所によっては生活の質が落ちてしまうため、手術を検討する理由となります。
三つ目が周囲組織を圧迫する場合です。
例えば筋肉の間にできてしまう場合や血行を阻害してしまう場合ですね。
こちらも主に生活の質を改善するための治療となります。
四つ目が大きくなるスピードが速い場合です。
良性腫瘍と悪性腫瘍の挙動の大きな違いに大きくなるスピードが挙げられます。
「脂肪腫だと思ってたのに実は脂肪肉腫だった…」
という可能性を考えて治療するかどうか検討するといいでしょう。
まとめ
犬の脂肪腫は比較的よく遭遇する良性腫瘍ですが、中には放置せずにしっかりとした治療が必要となるケースもあります。
「愛犬の体に柔らかいしこりができた」
「獣医さんに脂肪腫と診断されたけど心配」
などある方は当院までご相談ください。
長野県伊那市の動物病院
伊那竜東動物病院