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2024.12.14

犬の胃切開術|愛犬が誤食をしてしまったときの手術について獣医師が解説

犬の有名な手術の一つに胃切開術があります。

主に異物の誤食などで適応となる手術ですね。
胃切開術は動物病院でも実施頻度が非常に多く、飼い主様の中でも
「身近な犬がこの手術を受けていた」
という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回はこの犬の胃切開術がどんな時に行われるかについて詳しくご説明します。

ぜひ最後までお読みいただき、犬に胃切開術が必要になったときのためにお役立ていただけると幸いです。

胃切開術とは

胃切開術とは文字通り胃を切開する手術です。
しかし胃切開術は、ただ胃を切開するためだけに行う手術というわけではありません。
胃の中の異物を摘出するために行います。

多くの場合は、犬が異物を誤食してから緊急的に行います。
飼い主様も心構えができずに手術に踏み切られる方が多いですね。

胃切開術の適応

胃切開術は胃の中の異物を摘出するために行います。
しかし、現在では内視鏡の技術が発達しているため、

「わざわざお腹を開けなくても内視鏡で摘出すればいいのでは?」

とお考えの方もいるかもしれません。

確かに内視鏡は体を傷つけることなく、カメラで確認しながら異物を取り出せる体に優しい手術です。

しかし誤食したものが

  • 大きい

  • 鋭利

  • 紐状

の場合は内視鏡で摘出することはできません。

誤食したものが大きい場合

内視鏡では大きい物を摘出することができません。
内視鏡は、内視鏡の先端で細長い鉗子という器具を使って、物をつまむことができます。
しかし、この鉗子は非常に小さく大きなものを持つことができません。
また、内視鏡で物を摘出するときは、胃よりもはるかに狭い食道を通って摘出する必要があり、大きな物だと食道を通ることができません。
以上の理由から内視鏡では大きい物を摘出することができないのですね。


誤食したものが鋭利な場合

内視鏡の操作の自由度は非常に低いです。
そのため内視鏡の操作では、自分でも予期せぬ動きをしてしまうことがあります。
誤食したものが鋭利な場合、その予期せぬ動きで胃のどこかに刺さってしまうことがあります。
また、正しい内視鏡の操作ができたとしても、胃よりも狭い食道を通過する際に食道に刺さってしまうことがあります。

誤食したものが紐状の場合

紐状の物も内視鏡で摘出するのは困難です。
紐状の場合、紐の先端がどこかに引っかかってしまい、力をかけても摘出できないことがあります。
また無理に引っ張ると、消化管に摩擦が生じ、穴が空いてしまうこともあります。
「内視鏡で摘出しようとしたら消化管に穴が空いて結局手術になってしまった」
という事例も存在しますね。

胃切開術で気をつけるべきこと

異物誤食をした際に胃切開術を成功させるには、異物が胃の中なければいけません。
「いざ胃切開をしたのに胃の中に異物がなかった」
ということは避けなければいけませんね。
胃の中に入ったものは4〜6時間かけて小腸に入ります。
小腸は胃よりも狭い消化管なので、異物が詰まってしまう場合は、命に関わることもあります。
また小腸に異物が詰まった場合は、腸切開術や腸管切除術などの胃切開術よりも合併症の多い手術をしなければいけない場合もあります。
そのため異物を誤食した場合は、4〜6時間以内に手術を行うのが理想ですね。
愛犬が異物を誤食したと気づかれた場合は、なるべく早くに動物病院に相談しましょう。

術後に気をつけることは?

胃切開術は胃を切開する術式で、その後は胃の切開部位が癒合するのを待つ必要があります。
癒合するまでの間に消化に悪いものの食事や暴飲暴食は控えなければいけませんね。
動物病院で食事に関する指導を聞き、それを遵守するようにしましょう。

まとめ

小さな異物の摘出では内視鏡が主流になってきていますが、異物の種類によっては胃切開術は行わざるをえない手術ですね。
胃切開術を成功させるためには、異物誤食を早期発見し、早期に手術に踏み切ることが必要です。

犬が異物を誤食した、最近吐き戻しが多いなど異常を見つけたらすぐに当院にご相談ください。


長野県伊那市の動物病院

伊那竜東動物病院

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