ブログ

2024.10.09

犬の脾臓腫瘍は腹腔内出血する?|大量出血する前にできること

「健康診断で脾臓に腫瘍ができていると言われて不安」

「脾臓の腫瘍に対して手術をするか迷っている」

「お腹の中で出血したら命に関わると言われて不安」
こんなふうに感じられている犬の飼い主様も多いのではないでしょうか?

実際脾臓の腫瘍は対応を間違えると命に関わることがある病気です。
今回はこの脾臓腫瘍について解説していきます。
脾臓腫瘍を持っている愛犬を飼われている方はぜひ最後までお読みいただき、日頃の不安の解消をしていただけたら幸いです。

犬の脾臓腫瘍とは

脾臓は免疫機能を調節したり、血液を貯蔵したりする、お腹の中の臓器です。

この脾臓に腫瘍ができてしまうことを脾臓腫瘍と呼びます。

腫瘍には一般的には良性腫瘍と悪性腫瘍があり、脾臓腫瘍でも例外ではありません。

報告によって差はありますが、脾臓腫瘍の悪性腫瘍の確率は50〜66%と言われています。

犬の脾臓の悪性腫瘍にはどんなものがあるの?

犬の脾臓の悪性腫瘍には以下のものがあります。

  • 血管肉腫

  • リンパ腫

  • 肥満細胞腫

  • 線維肉腫

これらは放置すると命に関わるため早急な対応が必要になりますね。

脾臓腫瘍の治療方法

脾臓腫瘍の治療方法で最も一般的なものは外科手術で脾臓を摘出することです。

脾臓腫瘍の治療で脾臓摘出を行う理由には様々なものがあります。
理由の1つ目が、脾臓を摘出してしまえば原因となる脾臓腫瘍を丸ごと取り除けるということです。
理由の2つ目が、脾臓腫瘍の診断のためです。
脾臓腫瘍にはここまで解説したように悪性腫瘍の可能性もあり、放置すると命に関わることがあります。
しかし脾臓腫瘍の問題点には、事前に良性か悪性か診断することが困難であるということがあります。

一般的に腫瘍を良性か悪性か診断するためには、腫瘍に注射の針を刺し、腫瘍の細胞を採取し顕微鏡で観察する、細胞診という検査が用いられます。
脾臓の悪性腫瘍の中で最も多いのは血管肉腫という腫瘍ですが、この血管肉腫には細胞診では良性腫瘍と区別がつかないという特徴があります。
また、血管肉腫は血管が豊富な腫瘍のため、針を刺すことで大量出血してしまうリスクもあります。
そのため診断をするためには、針を刺して細胞を採取するより、脾臓を丸ごと摘出して脾臓ごと病理組織検査をしなければいけないのですね。
以上の通り脾臓の腫瘍の治療では

  • 腫瘍を丸ごと摘出するため

  • 腫瘍の診断をするため

の2つの理由から脾臓摘出を行うことが一般的です。

脾臓腫瘍が良性の腫瘍でも命に関わることがある?

一般的に良性腫瘍と悪性腫瘍と聞くと

「良性腫瘍は良いものなので治療の必要がない」
「悪性腫瘍は悪いものなので早急に治療する必要がある」
こんなふうに思われるかもしれません。
しかし脾臓腫瘍では良性腫瘍でも命に関わることがあり、治療する必要がある場合もあります。
脾臓は元々血液を貯蔵している臓器です。
そのため脾臓にはその他の臓器よりも血液がたくさん含まれています。
脾臓の良性腫瘍は悪性腫瘍と比べて大きくなる速度は遅いですが、徐々に大きくなってしまうことがあります。
腫瘍が大きくなり強い衝撃が加わると、腫瘍が破裂し出血することがあります。
脾臓には血液が大量に含まれているので、この破裂によりお腹の中に大量出血し、命を落としてしまうこともあります。

そのため、脾臓腫瘍からお腹の中に大量出血している場合は、その脾臓腫瘍が良性であろうが悪性であろうが、緊急手術で脾臓摘出を行うことが非常に多いですね。

以上のように脾臓腫瘍は良性腫瘍だったとしても破裂してお腹の中で出血していたら手術をしなければいけないのですが、普通は破裂する前に手を打ちたいものですよね。
事前に良性腫瘍か悪性腫瘍か細胞診では判断が難しいため、脾臓腫瘍は健診で見つかった段階で手術を検討することが多いです。
手術の後、結果的に悪性腫瘍だったら「手術して病巣を取り除くことができてよかったね」ということになり、結果的に良性腫瘍だったら「お腹の中で破裂する前に腫瘍を摘出できてよかったね」ということになります。


脾臓を摘出しても問題ないのか?

脾臓は体にとって重要な役割を果たしています。

それだけ重要な役割なのであれば脾臓の摘出を考えるときに

「摘出しても本当に大丈夫なのか」

ということに不安になりますよね。

一般的には脾臓を摘出しても、他の臓器が脾臓の代わりをしてくれるため、日常生活に大きな支障はありません。

しかし、スポーツ犬など高い運動量を求められる犬では運動後に疲れやすくなったり、猟犬のような感染症にかかるリスクのある犬では免疫力の低下が問題になることがあります。

多くの場合は脾臓を摘出しても問題はありませんが、手術の前に獣医師とよく話し合ってから実施を決定しましょう。


まとめ

脾臓腫瘍は犬にとって一般的な腫瘍で、時には命に関わることもあります。
そのため、脾臓腫瘍の対処方法は慎重に決める必要がありますね。

当院では脾臓摘出を含めた外科手術に力を入れています。

もし健康診断などで脾臓腫瘍と診断され、不安に感じられている方は、いつでも当院までご相談ください。


長野県伊那市の動物病院

伊那竜東動物病院

伊那竜東動物病院